【事例あり】企業ビジョンを定着させるインナーブランディングの施策とは?

[事例あり]企業ビジョンを定着させるインナーブランディングの施策とは?徹底解説!

目次

インナーブランディングとは?

インナーブランディングとは、企業が社内の人間に対して行うブランディング活動を指します。

「ブランディング」という言葉を聞くと「対外的に自社の良いイメージを売り込む」と考える人も多いかもしれません。
ブランデディングについて詳しく知りたい方はこちら→

ですが、企業で実際に働いている人の振る舞いやサービスが感じ悪ければ、たとえ商品やコンテンツが素晴らしくても、利用意欲が削がれるのではないでしょうか。

逆説的に言えば、従業員に自社ブランドのイメージにふさわしい品性や振る舞いをしてもらい、一人ひとりに「企業の顔」としての自覚を持ってもらうと、顧客満足につながります。

それを実現するには、従業員が自社ブランドのミッションを正しく理解し、自然と企業ブランドのイメージに沿ったアクションが取れるように、従業員に対して周知・教育していかなければなりません。

なお、社内に対して行う「インナーブランディング」に対して、対外的なブランディング施策を「エクスターナルブランディング」、もしくは「アウターブランディング」と言います。

一般的に、インナーブランディングを成功させることで、エクスターナルブランディングの成功にもつながると考えられています。

エクスターナルブランディングとの違い

違い①:誰に向けたものか?

インナーブランディングは、従業員や株主など社内の人間に対し、企業ブランドの価値や目標モデルを理解してもらい、具体的な行動レベルで普及させる行為のことです。

一方エクスターナルブランディングは、主に製品のユーザーや消費者など、対外施策としてのブランディングを指します。

さらに広義でのエクスターナルブランディングでは、直接企業を取り巻く人間だけでなく、地域住民や特定のコミュニティ、官公庁などの機関も対象になり得ます。

違い②:どんな思いがこもっているのか?

インナーブランディングでは、企業理念や製品・サービスに込められた想いをメッセージの形にして伝えます。つまり、従業員に会社を正しく理解してもらう周知活動です。

それに対してエクスターナルブランディングでは、企業・製品・サービスなどの面で、外部の方に伝えたいブランドの価値を発信するのが一般的です。

多くの場合、ブランドが提供したいイメージを顧客の思考に繋げられるような価値を提案します。

違い③:メディアの使い方

インナーブランディングでは、メディアを利用するケースは稀です。

メッセージ共有のために、社内報やFacebook、LINEのグループ機能を活用するケースは見られますが、限られた人しか閲覧できないのが一般的です。

さらに類似の機能としては、社内だけで利用できるイントラネットを導入し、その中でインナーブランディングを行うこともできます。

一方、外部に対するブランディングでは、現在使われているあらゆるタイプのメディアの中から、ブランディングの規模や目的に応じて、利用されます。

それと並行して、Twitterなどのソーシャルメディアを積極的に活用する事例も多く見られます。

違い④:考え方・価値観の共有

インナーブランディングの最大の目的は、社員と企業の価値観の共有です。

社員全員が企業の思いや理念を代弁できる専門家になれるように、企業・社員ともに努力が求められます。

社内関係者、全員が企業理念やコンセプトを自発的に体現することで、会社の目標を達成したり、ブランドが目指す価値の実現につなげていけるのです。

それに対して、エクスターナルブランディングは必ずしも価値観の共有を求めるとは限りません。
ブランディング対象者のうち、できるだけ価値観を共有できる方が、望ましいとは言えるでしょう。

ですが、インナーブランディングほどの強い価値観の共有は求めず、どれだけ価値観を共有するかは、対象者に委ねられます。

違い⑤:価値観・考え方を見える化したビジョンステートメントの使用の有無

インナーブランディングの施策を行う場合、会社や製品、サービスについて、未来を意識したビジョンやミッションを文章にしてメッセージを伝えます。

未来を見据えた目標や価値観をメッセージに盛り込んで社員に伝えることで、社員の意識に落とし込んでいくのが特徴です。

一方、未来に向けたメッセージという性質上、エクスターナルブランディングでビジョンステートメントを用いられるのは、稀だと言えるでしょう。

違い⑥:ブランディングの目的


これまでの説明をまとめると、インナーブランディングの最終目的は、社員一丸となって理念や価値観を共有し、体現できるようにすることです。

未来を見据えたインナーブランディングを行うことにより、企業のスペシャリストとして対外的にブランド価値を伝えられるようになります。

対してエクスターナルブランディングの最終目標は、製品やサービスの販売です。
まずは自社の製品やサービスをカスタマーに認知してもらい、接触の機会を増やします。そこからブランドイメージをカスタマーの購買行動につなげるのが、一般的なエクスターナルブランディングの流れです。

時には製品やサービス理念・価値観の共有を消費者に対して求めることもありますが、最終目的ではなく、あくまでもブランディング施策の一要素にとどまります。

インナーブランディングの目的とは?

インナーブランディングの目的は、企業のブランドイメージを社員・従業員に浸透させること、会社の内側からブランディングすることです。

例えば接客において、社員の行動は企業に対する感情に影響しますし、社員自身も自社に対する愛着がなければ、心からお客様にお勧めしにくいものです。

将来の企業ビジョンを共有することで愛社精神を促し、お客様に対峙した時に積極的に良いサービスを提供できるようにすることが、インナーブランディングの本質だと言えるでしょう。

インナーブランディングのメリット

社員の労働意欲の向上

まずインナーブランディングのメリットとして挙げられるのは、社員の労働意欲の向上です。

会社や製品、サービスの価値観を社員と共有できれば、自ずと従業員の会社への好感度アップが期待できます。

自社ブランドに対する愛着やプライドを持ってくれることで、社員の周辺の人々への宣伝も見込めますし、知り合いからの宣伝行為であれば、好感を得やすいでしょう。

その結果第三者の間でもブランドイメージの向上につながるので、社員自身も「働きがいのある会社」と感じられ、好循環のサイクルが生まれやすくなります。

社員同士のチームワークの向上

従業員一人ひとりが企業の一員であるという誇りを持てれば、連帯感が生まれ、相互協力しやすい空気につながります。

また、自発的発言や行動を促すことで、「生産性の向上」「業務効率化」「業務改善の促進」を期待できます。

さらに、理念やビジョンを共有することでコミュニケーションを積極的に取るようになり、従業員の満足度向上につながるでしょう。

そこから退職者の減少や仕事への意欲アップに結びつく確率が上がりますから、インナーブランディングはお勧めです。

コンセプト・方向性に共感した社員の採用ができる

インナーブランディングを行い従業員の愛社精神を育てると、仕事上の目標設定がしやすくなります。

目標があれば「会社で働く理由や意義」を見出しやすくなり、「生活のため」という理由だけではない働き方をしてくれるようになるでしょう。

そのような姿勢を対外的にも示せれば、企業のビジョンや価値観にシンパシーを感じる人材も集まりやすくなります。

ビジョンを共有できた人材を採用することで、離職率が改善され、企業で長く活躍してくれるので、新規採用の際のコストダウンにもつながります。

社員による企業の価値観の拡散

最近はSNSなどを利用した、従業員自らが勤める企業に関する情報発信をよく見かけます。

自社のビジョンや価値観をしっかり理解し、自ら情報発信をしてくれる社員の発言は、発言の熱量や重みが違うと感じるのではないでしょうか。

一方的に情報発信するだけではなく、フォロワーとの相互コミュニケーションを図ることで、さらに多くのフォロワーを集めている社員も珍しくありません。特に、SNSで既に多くのフォロワーを抱えている社員は言動も注目されやすいですから、影響力も大きいでしょう。


インナーブランディングのデメリット

インナーブランディングはメリットに注目が集まりがちですが、デメリットも存在します。

今度は、インナーブランディングのデメリットについて解説しましょう。

時間がかかる

インナーブランディングの目的や内容を 検討・策定し、社員全員が価値観を共有して体現できるようになるには、相当の時間がかかります。

インナーブランディングは将来に向けたビジョンを共有するため、理念やコンセプトは頻繁に変わるものではありません。そのため、活動の計画立案や実行、発信したメッセージや意図がどの程度従業員に周知・実行されているか、アンケートなどを利用してモニタリングしなければなりません。

また、コンセプトに沿った各種施策は定期的に見直しを図り、修正・実行を繰り返しながら、施策を行うのが大切です。

このように、インナーブランディングは一朝一夕で成果を上げるようなものではないので、短期的な成果を上げるには不向きです。

コストがかかる

しっかりしたインナーブランディングを進めるには、企業のビジョン作成の段階からコストが発生します。従来の手法に限界を感じていた場合には、外部のコンサルタントに依頼を出さなければなりませんし、企業のビジョン作成そのものについても、コストが発生します。

また、社員全員でビジョンステートメントを共有するためには、周知するための環境やツールを整えなければなりません。例えば既存のイントラネットを活用するとしても、新たなページの追加費用や、コピーライターへの委託料などの外注費用が発生することも考えられます。

価値の高いインナーブランディングを進めるためには、金銭面・労力面共にある程度コストを投資する覚悟が必要です。

価値観の共有しない社員の居心地が悪くなる

インナーブランディングの最大の目的は、理念やビジョンの共有です。
ですがそれを裏返せば、価値観を共有できない社員の排斥につながりかねません。

多様な価値観が尊重される現在は、100%の社員が同じ価値観を共有するのは、非現実的と感じる人もいるでしょう。また、人材の多様性を謳いながら、一方で「同じ価値観の共有」や体現を求められるのは、価値観の多様性と矛盾します。

また、教育担当の上司や人事は、一貫性のあるブランドイメージを伝えるのも、大切な役割です。矛盾してばかりのメッセージを伝えるのは、外部からの信用を勝ち取る以前に、内部の人間からの信用失墜を招いてしまいます。

そのような雰囲気は自ずと伝播するものです。社員に一方的にメッセージを伝えるだけでなく、インナーブランディングを手掛ける部署や社員も、日頃からビジョンを共有しやすい空気を醸すことも大切になります。

自社のサービスレベルとブランディングのミスマッチが起きると逆効果に。

会社や製品、サービスについて明白な価値観を確立できないままブランディングを進めると、逆効果を招くリスクがあります。

インナーブランディングの理想像や理念が不明瞭であったり、現状とかけ離れ過ぎている、反社会的な活動を掲げたりしている場合は、社員の共感を得にくいでしょう。

一例として、地域に根ざした顧客サービスをセールスポイントにしているにも関わらず、「世界的な活動を目指す」というコンセプトを掲げたとします。これでは、目標が現実と乖離し過ぎであり、社員は違和感を覚えます。

冷めた目で上層部を見るようになり、ミッション達成にも力が入らなくなる可能性が高くなるでしょう。

インナーブランディングを行う際には、社員が実現可能なプランを掲げるように配慮するのが、望ましいと言えます。

目的が不明瞭だと逆効果になる

インナーブランディングを社員の行動で体現してもらうには、目標や方針を明確化するのが大切です。

目的が不明瞭では、自分の行動の結果を予測しにくいため、途中プロセスのアクションも起こせません。

実現性や共感性を検討するのはもちろんのこと、情報発信する前にビジョンの共有内容の選別や、活動計画を綿密に練り上げることにも留意したいもの。

漠然とした目標ではなく、実現可能な目標を定めることで、社員自身も行動のビジョンがつかみやすく、具体的な行動にもつなげやすくなります。

インナーブランディングができていないと起こるリスク 

では、インナーブランディングができないとどのようなリスクを伴うのでしょうか。

従業員の会社への不満の増加

インナーブランディングを実行しないと、社員が企業に対して誤解を持ちかねません。たとえ社員が従業員のために行った施策であっても、社員がその意図を理解し、納得してくれなければ、不満が募っていきます。

そのような誤解を放置しておくと、退職者の増加を招きやすくなります。

インナーブランディングを通して、日頃から社員の意向や動向には、気をつけたいところです。

従業員の不満の増加→従業員の減少

インナーブランディングを行わないと、企業・従業員相互のコミュニケーション不全を招きかねません。

従業員の不満が募り、それが従業員全体に広がると、大量の退職者が出ることも考えられます。
肝心の人材がいなくなっては、業績上は黒字であっても事業を継続することは難しくなるでしょう。

優秀な人材に長く働いてもらうためには、インナーブランディングは欠かせないものです。

従業員の意識の低下

自分の仕事に対してプライドが持てない人材が増えれば、社内の士気は低下します。
やる気が出なければ仕事の質やサービスも低下し、企業のブランド力や信用失墜にもつながりかねません。

自社ブランドの魅力の発信者となってもらうためにも、インナーブランディングを通して社員のモチベーションアップを図るのが望ましいと言えます。

インナーブランディングの進め方

①企業の存在意義・目指すべき目標・共有すべき価値観の策定。

最初に決めなければならないのは、企業の存在意義を表す企業理念(ミッション・ビジョン)と、「どのような企業なのか」を体現する、「行動規範(バリュー)」です。

これらを明文化することで、「自分がその企業で働く理由」「どの目標に向かって進んでいるのか」「そのために、どのようなアクションを起こせばよいのか」などを、一人ひとりが自覚しやすくなります。

場合によっては、会社の成長度合いや組織の状態に合わせて、当初のミッションやバリューの見直しも進めると良いでしょう。

②企業の存在意義・目指すべき目標・共有すべき価値観を浸透させる。

ミッションやビジョン、バリューを決めた後は、従業員に浸透させるフェーズに移ります。

浸透させる方法はいくつかありますが、社内向けの「カルチャーブック」などを制作・配布するのも一つの方法です。また、社内手帳などに会社の信条(クレド)が記載されていたり、信条を図案化したポスターなどを、掲示スペースに貼っている企業もあるのではないでしょうか。

企業ミッションの浸透に、絶対的な正解方法はありません。自社の社風や事情を考慮しながら、従業員にとって「会社が身近に感じやすい」方法を探っていくのがおすすめです。

③事業のブランドを浸透させる

企業理念だけではなく、社内報などを通じて現在手掛けている事業のブランド価値を、社内に浸透させるのもインナーブランディングの一つです。

たとえば、社内報をあえて手書きにして紙に印刷して配布し、その中で顧客からのメッセージを記載するというのも、仲間意識を高める上では有効な手段と言えます。

手書きにすることで、書き手の人柄や思いを連想しやすく、社員同士がコミュニケーションを取るきっかけにもなり得るでしょう。

このように、スタイリッシュな方法だけではなく、身内ならではのスタイルでミッションやバリューの浸透を図ることも可能です。

④①を体現した従業員の評価・表彰

日々の業務活動の中でバリューを体現してもらうには、企業理念を反映できた従業員をきちんと評価するのも重要です。

一方的にバリューを呼びかけるだけでは、モチベーション維持にはつながりにくいものです。
バリューを体現した行動を称賛し、どのようなアクションが評価されやすいのかを共通認識することで、次の具体的なアクションへつなげられるでしょう。

一例としては、従業員同士で成果給を贈り合う「ピアボーナス制」や、社内報での顕彰などがあります。

また、個人単位だけでなく部署の垣根を越えたプロダクトチームを結成し、そのグループも評価対象とするなど、さまざまな形での評価を取り入れるのもおすすめです。

⑤インナーブランディングの効果の測定

インナーブランディングが成果を挙げているかどうかは、施策の効果を定量的に分析すると、改善ポイントが把握しやすくブランド力の向上につながります。

手法の一つとしては、職場に対する愛着や信頼の度合いを表す従業員版の「従業員満足度」指数があります。

「身近な人にも薦められるか」などやや踏み込んだ回答で分析するので、通常のアンケートよりもよりも職場に対する本音を正確に把握しやすいと言われています。

さらに組織の状態を可視化する「組織サーベイ」など導入し、人間関係の問題点の洗い出しなどを行うケースも。

インナーブランディングはただ実行するだけではなく、継続的に効果を測り分析することで、外部に対するブランディングにも役立つでしょう。

インナーブランディングの実行時のポイント

企業の価値観を「策定」する時に重要な3つのポイント

①他社と差別化できているか

自社ブランドの理念を浸透させるには、他社の理念との差別化が大切です。

抽象的な理念を掲げ、他社との違いを打ち出せていない企業は多いもの。自社の強みを分析し、顧客価値を反映させた理念を明白にすると、従業員にも浸透し体現しやすいでしょう。

具体的には、ミッション策定において時間軸を組み込む、スタイル策定では顧客に対してバリューを届けるための行動を提示するなどの工夫するなどの対策が必要になります。

②意義のある価値観になっているか

掲げる理念は、自分が働く意義を感じモチベーションアップにつながるものが、望ましいです。

日頃の業務も「言われたから何となくやっている」というだけでは、モチベーションアップには繋がりにくいものです。

自分の仕事が、顧客に対してどのような満足度を提供できるのか、各自の特性などに合わせて整理していくと、メッセージが伝わりやすくなります。

③伝えたい人が共感しやすい内容になっているか

抽象的なメッセージだけでは、現場で企業理念の意図やバックグラウンドがしっかり理解されないことがあります。

理念の意図や背景を伝える具体的な物語やエピソードを盛り込むと、現場の従業員も自分のするべきことがイメージしやすくなるでしょう。

さらに文章のテキストだけでなく、イラストやマンガなどを利用するのも、相手方にメッセージが伝わりやすい方法の一つです。

企業の価値観を「浸透」する時に重要な3つのポイント

①伝えた情報に必要性があるか?

社内報などで時折見られる失敗は、情報の受け手側が「他人事」として読み流してしまうようなメッセージになっているものです。

一方的に情報共有をするだけで完結してしまい、従業員の感情を動かせていないのが原因です。
伝えるメッセージは、社員全員が当事者としてとらえられ、理念の実現や次のフェーズに向かう意欲を掻き立てられるような状態を生み出すのが大切だと言えるでしょう。

②伝えやすい情報になっているか?

企業ミッションの内容を表面的に伝えることはできても、なぜそのミッションが掲げられたのか、どのような行動がミッションに沿うのか説明できないのでは、ミッションの真価は発揮されません。

発信側ミッションを正しく伝えるのはもちろんのこと、伝える際に、その意図やバックグラウウンドも魅力的に語れるような人材の育成も、求められます。

③実行しやすい情報になっているか?

せっかくインナーブランディングを実施しているものの、ミッションの浸透施策を行うだけで満足していないでしょうか。

インナーブランディングは、具体的な分析結果などの「ものさし」があると、目視化できるので成果が見えやすく、次の行動につなげやすいです。

策定フェーズ・浸透フェーズのポイントを抑えた上で、丁寧なインナーブランディングを実行できれば、従業員のアクションが改善され、事業成果の向上が見込めるでしょう。

進める上での注意点

会社のコンセプトや目指す方向性の明確化

インナーブランディングを進める上でもっとも大切なのは、会社や製品、サービスのビジョンの明確化です。

外部に対して社員が一丸となりブランディングの発信をするには、まず自社のコンセプトや方向性を正確に理解しなればなりません。

従業員が会社や製品のビジョンやコンセプトの理解が不十分なままにインナーブランディングを進めても、彼らに体現してもらうのは難しいでしょう。

ビジョン・コンセプトの見える化

また、ビジョンのイメージを共有するためには、ビジョンステートメントも用意しなければなりません。
ビジョン単体を記すのではなく、ミッションやゴール、さらにその先にあるストレッチゴールについても、詳細かつ具体的に書くと有効です。

また、ビジョンステートメントは一度作成して長年使い回すのではなく、定期的にブラッシュしていくのが望ましいでしょう。最低でも1年に一度は更新していくことで、従業員の価値観とのマッチングにもつながります。

インナーブランディングを評価・フィードバック

インナーブランディングを評価したり、フィードバックしたりするシステムも整えなければなりません。

特にビジョンやバリューは、社員にどの程度しっかり浸透しているかを確認し、それが社員のモラルやモチベーションにどのように影響しているのか把握しましょう。

ある企業では、労働時間の1割から2割を、部下のコアバリュー共有の確認に費やすよう奨励されているとのこと。
この例からも、インナーブランディング施策後の評価やフィードバックの大切さが伺えるのではないでしょうか。

ビジョン共有のための教育・トレーニング

インナーブランディングの定期的なトレーニングや教育を行うのも、社員がビジョンを具体的な行動に移せるようにするには、有効です。

インナーブランディングを浸透させて行動で体現できるようにするには、研修会などでロールプレイングを行うなど、実体を伴う学習機会を設けるのが望ましいと言えるでしょう。

定期的に学習機会を設けることで、社員同士でビジョンを再確認したり、モラルやモチベーションアップが期待できます。

インナーブランディングの具体的な施策案

従業員に向けたWEBサイトの作成

従業員が注意を向けやすい手法の一つが、従業員向けのWEBサイトです。一方的に理念やビジョンを掲げるだけでなく、社内のイベントやお知らせ、従業員に有益なお役立ち情報など、社員が関心を持ちやすいコンテンツを用意するのも、社員に飽きられないための大切なポイントです。

さらに、社内インタビューを行って掲載することで、横断的に情報を共有し、ユーザーからのレビューを紹介するのも、従業員の注意を引きやすいでしょう。

自社をイメージしたポスターの作成

自社のオリジナルポスターを作成して、社内掲示板や廊下などに貼る方法も、インナーブランディングには有効です。

インナーブランディングのために新たなネットシステムを導入するには費用がかかりますが、ポスターであれば経費も比較的抑えやすいと言われています。

また、ポスターの中で社内マスコットにコンセプトを語らせたり、マンガの主人公と組み合せて従業員の士気を鼓舞するポスターなども、見かけたことのある人がいらっしゃるかもしれませんね。

従業員同士の意見交換を目的としたワークショップ

インナーブランディングを強化する施策の1つに、ワークショップの実施があります。

ワークショップを実施すると、違う部署の従業員同士が向き合い意見交換をすることで、社全体に共通するビジョンやバリューを共有できるきっかけ作りにもなるでしょう。

また、ワークショップでの体験を共有することで、部署によっては他人事だった現場の温度感も理解できるようになり、部署間のすれ違いなどを回避できるメリットもあります。

ワークショップは、企業と従業員、もしくは従業員同士の相互理解を高められる効果的な方法だと言えます。

企業の価値観を表す採用動画の作成

ビジョンやバリューを共有できる人材を集めるには、採用動画を作成する方法もあります。

採用動画を利用するメリットは、「言葉では伝わりにくいニュアンスまで伝えられる」「求職者が職場で働くイメージを持ちやすい」「会社のリアルな姿を見てもらうのでミスマッチを防ぎやすい」という点が挙げられます。

You Tubeなどに動画をアップすれば、スマートフォンでも手軽にチェックしやすく、求職者だけでなく全従業員に対しても、会社のメッセージを伝えやすい手法です。

成功事例

事例1:KPMGのケース

会計や経営コンサルティングを手掛けるKPMGでは、2014年に「あなたがここにいるのには理由がある」というキャンペーンを打ち出し、従業員の職場満足度アップに成功しました。

KPMGは国際的な大手監査法人として知られていますが、事務的な仕事も多く、自分の仕事の成果やその影響が見えにくいという課題を抱えていました。

そこで世界各国のKPMGの社員が「私の仕事の意味とは」という質問に答え、経営陣はそれをインタビュー動画としてまとめ、イントラネットを利用して世界各国のKPMG社内に公開されました。

世界各国の社員からインタビューを集めたため、中には「南アフリカの大統領選挙に関わっている」」「NASAの宇宙ステーション建設プロジェクトに関係している」「イランの駐米大使館で発生した人質開放事件とつながっていた」など、国際的なプロジェクトで働いていた社員もいたのです。

また、KPMG経営陣は動画を集めるだけではなく、社員に自分の仕事について発言することや、自画像のポスターの印刷や配布なども奨励しました。当時のCEOによれば、その年の感謝祭の日までに1万のインタビュー動画を集めるという目標も掲げられていたとのこと。

公開された動画やさまざま配布物などを通じて、KPMG社員は自分の仕事が世界の政治にも影響を与えたり、人類の発展に貢献するビッグ・プロジェクトにも関わっていることを知りました。

結果的に、同社では仕事の実体とメッセージを社員全員で共有することになったのです。

KPMGが行った一連のインナーブランディング施策によって、同社の社員のモラルは大きく向上し、社員による職場満足度も高まって、社員の定着にも役立ったと報告されています。

事例2:スターバックスのケース

スターバックスでは広告費を抑えている代わりに、人材育成に費用と時間を投入し、従業員の接客クオリティを高めています。スターバックスのインナーブランディングの成果は、外部に向けたエクスターナルブランディングの成功にもつながっているのです。

もともと接客の質に定評のあるスターバックスでも、リーマンショック後は、スターバックスでも売上が低下していました。

そのような状況打破のターニングポイントになったのは、レシートをレジに持参すると100円でドリップコーヒーのお代わりができる「ワンモアコーヒー」と、カップやタンブラーを持っていくとドリンクが50円引きになる「ブリングマイカップ」の施策でした。

それぞれ、ディスカウント施策の一種とも捉えられますが、ディスカウント施策は、企業に安っぽいイメージを与えるリスクもあったと言います。

ですが、1枚のレシートの情報を手がかりに、「遠方からのお客様」「再来店」などのメッセージを読み取り、従業員がその情報を元にお客様に一声添えるなど、接客カバーで顧客満足度を高めたと言われています。

元スターバックスCEOの岩田氏が述べているように、インナーブランディングの一環として、マニュアルを作らず従業員の自主性を尊重し、従業員の質を高めたことが、エクスターナルブランディングの成功も導いた好例と言えるでしょう。

事例3:ディズニーリゾートのケース

ディズニーリゾートのキャストの接客も、インナーブランディング成功の好例であると言われています。

もっとも、1955年7月17日にロサンゼルス近郊アナハイム市に誕生した初代ディズニーランドは、オープン当初は最悪だったと言われています。

入場券の偽造や、目玉だったアトラクションの故障、定員オーバーが原因のフェリー沈没など、現在のディズニーリゾートからは想像できないようなトラブル続きだったそうです。

それらの過去の反省点を活かし、徹底的に「夢の国」のイメージを作り上げたのが、現在のディズニーリゾートだと言えるでしょう。

例えば、スタッフそれぞれに役割を与え、テーマに沿った役を「演じて欲しい」という願いから、「キャスト」と呼ぶのは有名なエピソードですね。

それに対して来園する人は「ゲスト」と呼ばれます。

また、パークの清潔感を保つために、地面にごみがあるのを見つけたら、すぐに拾い、その際にも身をかがめずにすくい上げるように拾うなど、自然な振る舞いが求められます。

さらに、ゲストの質問に対して「わかりません」と答えてはならない、自分が演じるキャラクターのサインも練習しておくなど、ゲストが「夢の国の魔法」を最初から最期まで満喫できるように、随所で細やかな配慮がされています。

ディズニーグループが日頃からインナーブランディングを徹底し、常にブラッシュアップを図ってきたからこそ、ディズニーリゾートは、長く愛されるテーマパークとして成功しているのかもしれません。

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