アセスメントとは

アセスメント(assessment)とは、日本では主に「客観的に評価・査定」するという意味で使用されています。
最近は、企業を取り巻くさまざまな環境変化の中で、人事制度の要となる昇進・昇格制度の運用も多様化 してきており、社員の評価に関して「客観的な評価(アセスメント)」を行う企業が増えてきています。
例えば以前、職場でトラブルが起こりやすい無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)についてご紹介させて頂きました。
アンコンシャス・バイアスとは、無意識の思い込み(バイアス)、無意識の偏見を指す言葉です。
例えば「それは常識だよ」「普通〇〇だから」というように、「自分の常識=社会の常識」という風に当てはめてしまう大変危険な思い込みの一種でした。
そしてこれが会社の人事評価や採用にまで影響してしまうと、人材採用や社員の昇進・昇格に不公平が生じてしまいます。
このような不公平が起きないためにも、面接希望者や社員の評価に関して「客観的な評価(アセスメント)」を取り入れる必要があるのです。
アセスメント導入のポイント
アセスメントを導入する際のポイントは、 「測定したい基準」に 応じて適切な手法で評価・測定を 行うこと、目的に応じて複数の手法を活用することが重要です。
最近では以下のアセスメントツールが主流となっています。
【1】多面観察評価(360度評価)
【2】適性検査
【3】アセスメントセンター
例えば、リクルートマネジメントソリューションズがリリースしている、360度評価システム「MOA(Multi-Observer-Assessment)」は、日常の業務を、上司だけでなく同僚や部下含めた複数名の観察者が多角的に評価することで、人材を客観的に把握する評価システムです。
このようにMOAは、社内の様々な社員による行動評価を集めることで評価の客観性を高め、人事評価の参考データとして活用することができます。
また、多角的な評価による360度評価では以下の効果が期待できます。
【1】複数の評価社→客観性を高める
【2】多様な視点→多面的・複民的な人材把握
360度評価の結果は「得点(数値)」で表示されるため、自己評価と他者評価の一致度やギャップに基づいて効果的な能力開発につなげることが可能です。
そして、「適性検査」では、採用面接希望者(評価対象者)の能力・性格などをテストにより把握し、雇用するかどうかの一つの判断基準として採用しています。
ひと昔前の採用活動は、資格や学歴などを判断基準として、現在の能力やスキル、経歴を見ることが主流でした。
しかし、最近は雇用する側と働き手の「ミスマッチ」を減らすために、採用の際は「職種の適正」を能力だけでなく、「自ら主体的に業務を遂行できるか」「ビジョンはあるか?」「仕事にやりがいを感じられるか?」など、性格や考え方、働く姿勢を見る必要があると考えられるようになりました。
また、マネージャー職やリーダー職のための「アセスメント研修」と呼ばれる講座があります。
この講座を受けることで、客観的なアセスメント評価を得ることができます。
研修中、一貫して「理想的なリーダー像」に照らして自らの行動を省みることで、自らの行動や能力の特徴を 把握し、未来のキャリアプランの構築に役立てることができます。
以上、これらのツールは業種や業態、企業規模、目的によっても使い分ける必要があるため、自社にあったツールを選ぶ必要があります。
続いて、アセスメントの具体的な活用方法について説明していきます。
アセスメントの活用シーン

アセスメントは、組織内で次のように活用できます。
活用例①|従業員の昇進・昇格を検討する際
現在、顕在化している能力や経験だけではなく、潜在的な能力や性格が次のポジションで求められる要件や能力・資質を満たすものであるか、あるいはその潜在的な能力が今後発揮できる可能性が高いかという判断に活用できます。
活用例②|部署やプロジェクトのリーダーを決める際
部署やプロジェクトで次のリーダーを決める必要がある場合、客観的な診断結果に基づき潜在的な人材発掘が可能となるため、従来はその部門のスキルがないというだけで除外されていた人材を抜擢することができるようになります。
このように、アセスメントは、従業員の人事選抜に加え、配置転換やその後の能力開発に活用することができます。
アセスメントの役割
ここまで、企業で行う組織のアセスメントやそのツールを紹介してきましたが、本来アセスメントは、ある対象物を「客観的に評価・査定」するという特性があるため、汎用性が高く様々なシーンで活用されています。
◉アセスメントの種類
【1】看護・介護のアセスメント
看護・介護の世界でもアセスメント(客観的な評価)は活用されています。
患者の情報には、体温や血圧などの「データ情報」と、患者が実際に感じている痛みや不安などの「主観的な事実」があります。
看護の現場では、両方の情報を基に患者の状態に合ったケアプランを作成します。
介護の現場でも同様に、介護を行う対象者やその家族と面談を行い、まずは本人の状態や日常生活の状況をヒアリングし、それがケアプラン作成の判断材料となります。
【2】環境アセスメント
「環境アセスメント」とは、大規模な事業開発等が環境にどのような影響を与えるのかを予測し、その対策を事前に検討しておくことを指します。
例えば、リゾート開発やホテル事業、大規模な土地開発などの事業において自然環境に及ぼす影響は甚大です。
また、自動車やバス、トラックの製造では排出ガスが大きく環境問題に作用します。
これらが環境にどれほどのダメージを与えるのかを事前に予測し、予防策を考えておくのが環境アセスメントです。
【3】リスクアセスメント
リスクアセスメントは製造業や建設業など、工業の現場でよく使われます。
事故や災害などのリスクを事前に洗い出し評価することを「リスクアセスメント」といいます。
例えば、建設現場では「落下事故」「火災」「一酸化炭素中毒」といった危険性が考えられますが、そういった労働災害に対する低減措置や防止策を講じておくことで、リスク回避に繋げるといったものです。
【4】政策アセスメント
政策アセスメントとは、新規に導入(拡充)しようとする施策の企画立案等について、国土交通省の設定目標に照らして、その必要性、効率性、有効性といった観点から評価する手法です。
対象は「新たに導入しようとする施策」や「既存の施策等のうち、その改正、廃止、緩和、延長等を図ろうとするもの」などが含まれます。
詳しくは、国土交通省のページを参照ください。
国土交通省:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/hyouka/seisakutokatsu_hyouka_fr_000004.html
【5】テクノロジーアセスメント
1970年代に衰退したものの、近年再び注目されているものに、科学技術が自然環境や社会に与える影響を事前に予測・評価する「テクノロジーアセスメント」があります。
近年注目を取り戻しつつある背景には以下の理由が挙げられます。
・ヨーロッパ欧州議会でのテクノロジーアセスメントの設立
・遺伝子組み換え技術やナノテクノロジーなどの発展
などの理由から、安全性や倫理面での懸念を持つテクノロジーが発達し、改めて技術面での事前予測・評価が必要となってきたことが考えられます。
まとめ

企業が経営目標を達成するためには、組織内外の人材の能力・スキル・ポテンシャルを的確にかつ戦略的に評価するための指標が必要です。
昨今、「働き方改革」や「新型コロナウイルス」の影響なども相まって多様な働き方、多様なライフスタイルを認める動きが加速しています。
そんな多様化する現代において、偏りのある評価基準のままでは時代に取り残されてしまいます。
企業が成長する上でもアセスメント(客観的な評価)をいち早く取り入れ、自社に適した手法でアセスメントを行い、エビデンスに基づく効果的な人員配置や人材育成を実現していくことが急務となっています。