近年、社内の人間関係を向上させる効果のある「ソーシャルキャピタル」が注目を集めつつあります。
しかしながら、重要性を理解しているにも関わらず実行できている企業は少なく、具体的に自社へどう取り入れたら効果的なのかお困りの企業担当者も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、「ソーシャルキャピタルの概要や企業が取り入れるメリット、企業の事例」についてご紹介します。
ソーシャルキャピタルについて理解し、どのような取り組みが成功しているのか、詳しく解説しています。
ソーシャルキャピタルとは

ソーシャルキャピタルは、直訳すると「社会資本」という意味です。しかしながら、電気や道路、インターネットといった人々の生活基盤や経済活動を支える社会的インフラとは別の概念を示します。
厚生労働省の「ソーシャル・キャピタル」にて、アメリカの政治学者ロバート・パットム氏の定義を引用し、以下のように定義されています。
「ソーシャル・キャピタルとは、人々の協調行動を活発にすることによって、社会の効率性を高めることのできる、「信頼」「規範」「ネットワーク」といった社会組織の特徴のことを指す。」
「また、物的資本(PhysicalCapital)や人的資本(HumanCapital)などと並ぶ新しい概念を意味する。」
つまり、ソーシャルキャピタルとは、「人々の信頼関係や結びつき、ルールといった人間関係が資本になりえる」という考え方を示しています。
社会に属する人々が、ネットワークを構築することやボランティアを行うことで、新たな経済的活動や繋がりが生まれる効果が期待できます。
ソーシャルキャピタルを企業が取り入れるメリット
ソーシャルキャピタルによる効果は企業においても期待されています。こちらでは、ソーシャルキャピタルを企業が取り入れるメリットについて解説します。
- 離職率の低下
- 社内コミュニケーションの向上
それでは一つずつ見ていきましょう。
メリット①:離職率の低下
ソーシャルキャピタルを企業が取り入れるメリットの1つ目として「離職率の低下」が挙げられます。
例えば、ソーシャルキャピタルの一例である「メンター制度」を実行することにより、社内の人間関係が薄い新人の段階で、メンターの先輩との密な関係性を構築することができます。
実際、離職率が50%以上あった企業がメンター制度を取り入れることで、10%以下に抑えることに成功していることもしばしばです。
ソーシャルキャピタルは、人材の定着率を上げたい中小企業にとっても取り組むメリットが大きい施策と言えます。
メリット②:社内コミュニケーションの向上
ソーシャルキャピタルを企業が取り入れるメリットの2つ目として、「社内コミュニケーションの向上」が挙げられます。
例えば、ソーシャルキャピタルの一環として、社内交流や社内イベントを開催することで、普段関わりが薄い部署や役職の人と繋がるきっかけが生まれます。
新しいコミュニティが形成されれば、社内コミュニケーションの流動性を高めることができます。
社内の人間関係を構築しやすい環境を企業側で用意することにより、良好な人間関係や活発なコミュニケーションを実現します。
企業でソーシャルキャピタルを実践する方法

ビジネスの現場でソーシャルキャピタルの効果を上げるためには、社員同士が強固な信頼関係を築いていく必要があります。
こちらでは、効果が期待できるソーシャルキャピタルの例として以下の4つをご紹介します。
- フリーアドレス化
- チャットツールの導入
- メンター制度の導入
- 社内交流会の実施
上記の内容を参考に実行してみましょう。
方法①:フリーアドレス化
まずは、「フリーアドレス」という、社内のオフィス環境を工夫することで、ソーシャルキャピタルを実践できる方法をご紹介します。
ここで、フリーアドレスとは、固定の席を決めずに自由な席で仕事ができる制度のことです。
日本の大手お菓子メーカー「カルビー」では、役員の個室部屋や会議室などのあらゆる個室に存在する「壁」を無くし、自由な働き方改革を目指す一環として「フリーアドレス」制度を導入しました。
従来の固定席による人間関係が狭くなりがちなデメリットが解消され、コミュニケーションの流動性を高めることに成功しています。
短期的に見ると、固定席により密なコミュニケーションを取りやすいメリットがあり、むしろ今まで取れていたコミュニケーションが疎遠になる可能性が考えられます。
しかしながら、カルビーの例のように、長期的な視点で考えると、「フリーアドレス」によって社内のコミュニケーションが円滑になり、発想の多様化が期待されます。
方法②:チャットツールの導入
私生活ではLINEを始めとしたチャットツールの利用が一般的になりましたが、ビジネスの現場でも導入が進んでいます。
木専門メーカー「大谷塗料」では、10代から70代まで幅広い年齢層の従業員が在籍しており、それゆえにFAXや手書きメモ、ショートメッセージ、Eメールなど様々な連絡手段が混在していました。
また、若手層とシニア層の交流不足も長年課題となっていたため、コミュニケーションツールの一本化を目的とし、チャットツールの「ChatWork」を導入しました。
製造現場にて「Chatwork」を導入した結果、タイムリーな意見が出される等、社内の一体感を向上させることに繋がっただけでなく、従来製造現場における情報共有不足に対する不満も改善することに成功しました。
大谷塗料の例にもあるように、メールや電話よりも気軽で迅速なやり取りができるため、業務効率化だけでなくコミュニケーションの量が圧倒的に増えるメリットがあります。
方法③:メンター制度の導入
人材の定着率を高める施策として、「メンター制度」が注目を集めています。
「メンター制度」とは、「メンティ」の新入社員に対して「メンター」の先輩社員が1on1でペアとなり、サポートを行う制度のことです。
興味深い事例として、「資生堂」のメンター制度をご紹介します。
資生堂では、経営陣がメンティとなり、若手社員がメンターとなる「リバースメンター制度」を導入しています。
「リバースメンター制度」では、若手社員が経営陣に対してITやコンピュータ関係の知識を共有する等、若手社員が持つスキルの活用やコミュニケーションの活性化に繋がっています。
メンター制度を通じて、新入社員の社内人脈を広げる効果が期待できます。
方法④:社内交流会の実施
最後にご紹介するのは、日本企業における社員同士の交流として主流である「社内交流」についてご紹介します。
近年の社内交流は、ただ飲み食いする会ではなく社員同士の交流に主眼が置かれています。
例えば、IT企業の「DYM」では、「社内飲み会推奨制度」と呼ばれる制度があり、
目標達成部署飲み会や月一の社長との飲み会、成績で上位15名だけが参加できる飲み会、部署決起会と言った様々な社員同士の飲みニケーションの機会が用意されています。
DYMのように、新年会や忘年会以外にも会社外で交流する機会が設けられており、役員や社長など普段関わりの薄い人とも人脈を広げることに成功しています。
ソーシャルキャピタルを高め社内関係の向上へ

今回、ソーシャルキャピタルの概要やメリット、成功事例について解説してきました。
ソーシャルキャピタルを取り入れることで、離職率の低下や社内コミュニケーションの向上など、社内の人間関係が良好になる効果があります。
今回ご紹介した企業の取り組み事例を参考に、自社でもソーシャルキャピタルを実践してみてはいかがでしょうか。