老年学を活用して時代に合わせた新たなサービスを生み出す_ジェロントロジーとは?

ジェロントロジー|「人生100年時代」の現代に老年学が必要な理由

「人生100年時代」と叫ばれる現代。

老後資金2,000万円不足問題」という衝撃的な報道を鮮明に覚えている方も多いのではないでしょうか。

近年、先進国で最も早く超高齢社会に突入した日本において、シニア人材の見直しや高齢者の資産形成援助など、企業においても高齢化に伴う問題が如実となってきました。

また、少子高齢化によってシニア世代が多くなっている現代において、若い世代とシニア世代のお互いの歩み寄りが必要になってきます。

世代間のぶつかりを避けるために、若い世代が「加齢とは何か」を理解する必要があるのです。

その「加齢とは何か」を理解するための学問がジェロントロジーです。

ジェロントロジーとは、高齢化を対象とした研究分野で、高齢者を取り巻く経済や産業といった老齢化について幅広く研究が行われています。

本記事では、従業員の高齢化に悩む中小企業を救う「ジェロントロジー」をご紹介します。

ジェロントロジーについて概要や企業の実施例を理解し、自社の活性化やサービス化へ繋げましょう。

ジェロントロジーとは

ジェロントロジー(Gerontology)」とは、加齢に伴う心身の変化など高齢化を研究対象とした学問のことで、日本では老年学や老人学、加齢学とも呼ばれます。

ジェロントロジーでは、高齢者の健康と福祉、メンタルケア等の心理学、経済学、生きがい、ライフワークなどさまざまな角度から老齢化に関する研究が行われています。

ジェロントロジーは、高齢化の進行が早かった欧米において先駆けて研究が行われてきました。

近年日本においても、「人生100年時代」の到来とともに、超高齢社会のあり方を見直す中で注目が集まりつつあります。

産業ジェロントロジーとは

「産業ジェロントロジー」とは、ジェロントロジーの中でも、高齢者を取り巻く経済活動や労働といった産業の分野に特化した研究分野のことを指します。

特に、従業員の高齢化や技術の継承に悩む中小企業にとって、産業ジェロントロジーを意識することは重要と言えます。

私たちは、若い頃や小さい頃の経験は理解できても、自分より年齢を重ねた人達の経験は、その年齢にならないと得られません。

そのため、「加齢とはどのようなものなのか」ということについて理解する必要があります。

例えば、仕事に対するモチベーションの低下です。

「仕事に対するモチベーションが下がってしまうのは気が緩んでいるからだ」「気持ちの問題だ」と捉えられがちですが、この原因は単なる気持ちの問題だけではないのです。

人は、年齢を重ねるにつれて疲労の回復に時間がかかるようになり、気持ちと行動が伴わなくなってしまいます。

そのため、いくら仕事に対するやる気があってもすぐに行動に起こせなくなってしまうといった現象が起きてしまうのです。

また、加齢が原因で起こる現象はこれだけではなく、他には、突然仕事を頼まれてもすぐに対応することが苦手になります。

こういった「加齢によって起こってしまうこと」について、若い世代が学んで理解することで、シニア世代と若い世代の間で譲歩し合う気持ちが生まれます。

産業ジェロントロジーでは、シニア世代を含めた全世代の従業員が、定年や年齢、終身雇用などに脅かされずに、心身ともに健康で楽しく働き続けることを目指すのです。

金融ジェロントロジーとは

「金融ジェロントロジー」とは、ジェロントロジーの中でも、高齢者の経済活動や資産選択など、長寿・加齢によって発生する高齢者特有の金融問題の分野に特化した学問のことを指します。

慶應義塾大学のファイナンシャルジェロントロジー研究センターでは以下のように説明されています。

「高齢者の経済活動、資産選択など、長寿・加齢によって発生する経済課題を経済学を中心に関連する研究分野と連携して、分析研究し、課題の解決策を見つけ出す新しい研究領域」

慶応義塾大学「ファイナンシャルジェロントロジー研究センター」HPより https://rcfg.keio.ac.jp/

高齢化による認知能力の衰えによって、投資スタイルや資産寿命がどのように変化するのかといったことを研究します。

特に、資産運用・ローン・融資業務・資金調達など金融サービスを提供する企業は、高齢者を含め全世代にとって使いやすい金融サービスの環境を整える必要があります。

すでに米国では1988年に「Financial Gerontology」の学問分野が確立、2002年には米国ファイナンシャル・ジェロントロジー協会が設立され、日本に先駆け研究活動が行われてきています。

米国ファイナンシャル・ジェロントロジー協会では、「シニア世代やその家族に、お金・健康・社会生活について全般的にアドバイスができる人材を育成すること」を目的とし、金融機関で働く方を対象に金融ジェロントロジーの教育を行っています。

研修を終え試験に合格すれば「RFG」という団体認証資格を得ることもできます。

こういった資格を持っていれば、専門的な知識を持っていることによって、顧客に対してより理解が深められ、信用度のアップにも繋がることが期待できます。

近年、日本においても「老後資金2,000万円不足」が報道されたことをきっかけに、社会全体で金融ジェロントロジーへの関心が高まっています。

ジェロントロジーを学ぶメリット

「人生100年時代」と言われる現代。

この現代でジェロントロジーを学ぶのには、「高齢期、加齢を理解すること」という目的があります。

先述した通り、私たちは、若い頃や小さい頃の経験は理解できても、自分より年齢を重ねた人達の経験は、その年齢にならないと得られません。

高齢期に関する正しい知識がないまま、「高齢者はこのような商品・サービスが必要だろう」という推測だけで新規事業や商品の開発をしても、本当の高齢者の顧客はそのサービスを必要としているかは不確かなままです。

だからこそ、ジェロントロジーを学ぶことで高齢期に関する正しい知識を身につける必要があるのです。

また、シニア人材を採用する際にもジェロントロジーは役立ちます。 人材不足が課題とされている現代、シニア人材を採用する企業は少なくありません。

ジェロントロジーを学んでいれば、高齢期の健康に関する知識も身につけられるため、シニア人材に見合った人事管理を行うことができ、シニア人材の強みを活かしていくことができます。

ジェロントロジーでは、高齢期の悪い面ではなく、良い面に注目し、活かしていくことが重要なのです。

企業で行われるジェロントロジーの事例

こちらの項目では、ジェロントロジーを実践している企業の事例についてご紹介します。

日本の企業において、ジェロントロジーの思考を取り入れている企業はあまり多くありません。

日本企業での事例を抑え、自社でも素早取り入れられるようにしておきましょう。

  • 製造業|有本電器製作所
  • 家電量販店|ノジマ
  • 総合情報サービス|日本総合研究所
  • IT|NTTデータ

これからますます増えるシニア世代の人材を企業でどのように活かしていくのか、ぜひ参考にしてください。

事例①:製造業|有本電器製作所

人手不足の慢性化が問題となっている中小企業では、即戦力となる経験豊富なシニア世代の起用が進んでいます。

こちらの項目では、シニアの積極的な活躍を促進することで若手の起用につなげ、人手不足を解消している製造業の一例をご紹介します。

さまざまな産業機械等の部品加工を得意とする「有本電器製作所」は、シニア世代が働きやすい環境づくりを行うことで、人が集まる企業を目指しています。

具体的には、最新設備でも対応できない「手づくり品」や仕上げ加工ではシニアの熟練工が担当し、力仕事や機械操作では若手に任せるといったように、熟練度に基づき能力やスキルを活かせる業務を決めています。

また、工場内はバリアフリーを完備し工場内の怪我を防止、多めの照明で現場が見えやすいように工夫、さらにはAEDを設置しいざという時にも備えるなど、シニアでも働きやすい環境を整えています。

このように、年齢や性別を問わず優秀な人材の確保のためにシニアにとって働きやすい環境を整えることで、全世代が心地よいと感じる職場となり、優秀な人材を獲得できることにも繋がります。

事例②:家電量販店|ノジマ

日本においても高齢者の働き方が変わりつつある中で、定年退職制度の見直しが進んでいます。

例えば、家電量販店ノジマでは、再雇用契約の年齢上限を80歳まで拡大し、シニア世代の従業員における雇用機会を創出しています。

ただし、勤務日数・時間の調整を可能にし、現役世代と比較して柔軟な勤務制度を設けています。

ノジマの雇用制度は、産業ジェロントロジーの観点からシニア世代の働きがいを促進し社会に貢献できるだけでなく、企業においても高度な知識を持つ人材の活用ができるメリットもあります。

このように、シニア世代の豊富な商品・サービスに関する知識の共有はもちろんのこと、人生の相談役として職場に活気を与えることを目的としている企業も少なくありません。

事例③:総合情報サービス|日本総合研究所

高齢化に伴い、認知機能の低下は避けることができません。

そのため、高齢者は保有する資金や契約情報といった資産に関する重要な個人情報を金融機関に共有し、老後の計画に基づく資産運用が必要です。

そこで、各金融サービスにて、「声紋認証・ファイナンシャルプランニングツール・遺言書作成ツール」など、高齢者に寄り添う多彩なサービスが提供されています。

例えば、日本総合研究所のデジタルツイン「subME」と呼ばれるサービスでは、高齢者の認知機能や社会とのつながりをサポートする機能が提供される予定です。

具体的には、ユーザーとなる高齢者自身の趣味嗜好や行動パターンといった生活に関する情報から、状況に合わせてアドバイスを行います。

認知機能が低下した本人に替わり、専門的なデータに基づき最適な決定を下せる魅力的なサービスと言えます。

このように、高齢者の社会的つながりや認知機能・意思決定をテクノロジーで支援する「ジェロンテクノロジー」の構想が進んでいます。

IT|NTTデータ

NTTデータでは、生前遺言システム「Mirror」では、認知機能が低下する前に、自分自身のスマホアバターへ自分の身の回りに関する情報をスマホアプリへ登録するという機能があります。

例えば、日常で発生する支出やライフスタイル、資産、かかりつけ医といった医療やお金のパーソナル情報に加え、葬式に関する考え方や宗教といった「終活」に関する情報までチャット形式で記録していきます。

このように、終活に関連する相続財産や遺言書、契約情報など重要な内容をオンライン上で保存し、信頼できる第三者や家族に共有する仕組み作りが進んでいます。

まとめ

今回、「ジェロントロジー」と呼ばれる、老いることに関して心理学的な観点から考える学問について解説してきました。

ジェロントロジーでは、高齢者の健康や福祉、資金管理、働きがいなど、老いに関して幅広く研究対象としています。

日本の未来は超高齢社会であり、高齢者の豊かな人生のために、高齢者の身体的・認知機能に適したサポート体制を整える必要があります。

企業においても、ジェロントロジーの考えからシニア世代の従業員にとって働きやすい環境づくりや、高齢者の認知機能低下を支援するテクノロジーシステムの構築といった取り組みが重要となるでしょう。

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