最近よく耳にするギグエコノミーという言葉。
IT技術の発展に伴い、出社せずに働くことが可能になり在宅ワークの空き時間に別の仕事をする人や、企業に雇われずに、自分の知識とスキルを生かして、小遣いや生活費を稼ぐ人もいます。
このような新しい働き方で注目されている、ギグエコノミー。
今回はギグエコノミーについて、その意味から、拡大の背景や関連用語、現在の問題点について解説します。
ギグエコノミーとは

企業が単発もしくは、短い期間である仕事やプロジェクトに外部から労働者を雇う経済市場のことです。
以前は、マーケッターやコンサルタントなど一部の専門的知識や高度なスキルをもつ人が仕事を行っていましたが、今は幅広い職種で普及しています。
ギグエコノミーの「ギグ」の語源は、ミュージシャンが単発の演奏や小規模演奏を請け負うという意味のスラングです。
その「ギグ」という意味が、転じて特定の組織や企業に属さずに、インターネット等に掲載されている単発もしくは短い期間の仕事を請け負う働き方として使用されています。
そこから、ギグで形成される経済市場をギグエコノミーと呼ぶようになりました。
ギグエコノミー拡大の背景には何があるのか
最近聞くようになってきたギグエコノミーですが、急速に拡大しつつある背景にはどのような原因があるのでしょうか。
その原因を3つ解説します。
ITの発展による仲介サービスの充実化
近年、凄まじい勢いで発展するIT技術によるものがとても大きいです。
以前は仕事を探すとなれば、ハローワークで求人を探したり、エージェントに依頼したりなどが主流で個人と企業が繋がりにくい状況でした。
そこから、IT技術の発展に伴い、インターネット経由で簡単に企業と繋がれるようになり、また、それを仲介するサービスも増加してきました。
その結果、サービスを利用することで誰もが簡単に仕事を請け負えるようになったのです。
労働者の働き方改革
働き改革の導入により、より自分のライフスタイルに合わせて働きたいという労働者が増えてきました。
会社に依存せずに、自分の自由に働くという思考を持つ人が増え始めたことも、普及の一因です。
また、単発の仕事というと、あまり稼げずに生活費を稼ぐのは大変なイメージがあると思います。しかし、高いスキルを持っている人ほどギグエコノミーで会社員の平均月収以上を稼いでいます。
自分の持っているスキルを最大化できるギグエコノミーだからこそ、労働者も積極的に活用しています。
企業による労働の選択
ギグエコノミーが広がることで、企業にも多くのメリットが生まれます。
スキルレベルの高い人を継続的に雇うのではなく、必要な時に雇うことによって人件費などのコストを抑えることが可能です。
通常は、高いスキルレベルの労働力を確保しようと思うと、それなりに時間とコストを要しますが、ギグエコノミーでは、求めるレベルの労働力がすぐに手に入ります。
そのため、ギグエコノミーが広がることは企業にとっても選択肢が広がるメリットがあります。
シェアリングエコノミーとの違い
ギグエコノミーと聞くと、「シェアリングエコノミーと似てるため意味は類似しているのでは?」と思う方もいると思います。
シェアリングエコノミーとは、個人が保有している資産を他人に貸し出して活用することで形成される経済市場です。
考え方としては、「モノ」が根底にあります。
例えば、普段使わない自動車や別荘を他人に貸し出すことで、貸し出した費用を相手からもらうというのが、シェアリングエコノミーで個人の「モノ」をシェアするということです。
ギグエコノミーの場合は、個人が持っているスキルや知識を、企業が単発的に活用する経済市場です。
考え方としては、「人材」が根底にあります。
どちらも、特定のものをシェアするという意味では似ていますが、根底のシェアするものが異なっている点で大きく異なっています。
ギグエコノミーの関連用語

ギグエコノミーの経済市場では、多くの関連用語が使用されています。
ここでは代表的な3つを紹介します。
ギグワーク
ギグエコノミーで企業または、個人から発注されている単発の仕事のことを指します。
仕事の種類には、誰もができる簡単な仕事から、専門的知識が必要な高度な仕事まで幅広いです。
簡単な仕事の例として、クラウドソーシングでよく見かけるアンケート型の「タスク」案件があります。
ギグワークについてより詳しく知りたい方はこちらから
ギグワーカー
企業や組織等に属さず、ギグワークを請け負って仕事をする労働者のことを指します。
代表的な例では、ウーバーイーツの配達員です。
彼らは、会社に属さずアプリ等で指定された場所に指定されたものを依頼があるたびに届けるというように、単発の仕事を繰り返して働いています。
クラウドソーシング
企業や個人がインターネットを通して、不特定多数に仕事を依頼することを指します。
クラウドワークスやランサーズなどのサイトが代表的な例で、それぞれのサイトには多種多様な仕事が掲載されています。
発注者・労働者問わずに、仕事を依頼したり、請け負えるのも特徴です。
ギグエコノミーの問題点
ここまで読むとギグエコノミーが普及することは、労働者や企業にとってメリットが多いように感じると思います。
でも、そんなギグエコノミーにも大きな問題は存在します。
ここでは、3点その問題を説明します。
労働者の孤立
ギグエコノミーで発注される仕事は、インターネット経由がメインです。
そのため、労働者が取引先など仕事関連の人と一度も会わずに仕事を完結するという環境になっています。
在宅で成立してしまうということから、ギグエコノミーを活用している人たちは社会からの孤立もしくは、繋がりの希薄化が進みます。
その結果、仕事に対する意欲の低下や、中には精神的に障害を抱えてしまうという事例もあるため、如何に社会と労働者を孤立させずに仕事を行うかということにも配慮が必要です。
労働法が適用されない
会社員であれば、労働災害など仕事において何かあった場合は、労働法が適応されます。
しかし、ギグワーカーは企業に所属しているわけではないため、労働法が適用されません。
急速にギグエコノミーが普及しているため、整備が追いついていないという点もありますが、基本的にギグワーカーは個人事業主として扱われます。
そのため、労働においては全て自己責任ということになっています。
個人事業主とは別に、ギグエコノミーにおいて労働者を守るシステムの整備がまだ整っていないため、働く際には注意が必要です。
スキル不足による貧困
ギグエコノミーで発注される仕事は、簡単なものから専門的なものまで幅広くあります。
専門的なものほど、単価が高く簡単なものは安い傾向です。
また、クラウドソーシングなどのサイトには多くの仕事がありますが、最低単価という概念がありません。ギグワークにおいて、企業との雇用契約はありません。
そのため、最低単価で仕事を受けざるおえない、仕事を選ぶことができない労働者も存在します。
簡単な仕事ほど労働者の需要が高いがために、低単価で仕事を続けた結果、貧困が生まれるということが発生しています。
ますます普及が期待されるギグエコノミー

新しい形の経済市場として、普及が拡大しているギグエコノミー。
労働者は、自分のライフスタイルに合わせて働けたり、自分の価値を最大化して評価してもらえたり、企業は必要な時に必要な人材を確保しコストを抑えたり、即戦力を確保することが可能になってきました。
その一方で、普及による労働者の社会との関係性の希薄化、労働者を守る法律の未整備や新たな貧困が生まれたりなど、問題点も存在します。
今後ますます普及していくであろうギグエコノミーがつくる時代について、柔軟に付き合っていきましょう。