新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)の影響で、多くのビジネスパーソンの働き方は、大きく変わりました。
特に、最近は「個の時代」と呼ばれることも多く、企業や組織に属さない働き方も広まりつつあります。
そこで、注目を集めているのが、セルフブランディングです。
今回は、組織に縛られず個の時代を生き抜くための、
- セルフブランディングの概要
- メリットとデメリット
- 構成要素
- 注意点
- 取り組み方
について、解説していきたいと思います。
セルフブランディングとは

セルフブランディングとは、文字通り自らの力でプロモーションを行い、認知度を広めていくブランディング手法のことです。
セルフブランディングの主な手法は、SNSでの認知度拡大、書籍出版による権威付けなど、戦略的に自分の価値を訴求することで、ビジネスにつなげていくというものです。
自身の力で、マーケティングや宣伝活動を行うため、自分自身を「ブランド化」していくことが必要になるため、目に見えない知識や技術などの価値を魅力的に発信する力が問われていきます。
次に、
- パーソナルブランディングとの違い
- セルフプロモーションとの違い
について、解説していきます。
パーソナルブランディングとの違い
セルフブランディングによく似た言葉に、「パーソナルブランディング」と呼ばれる手法があります。
その違いは以下の通りです。
・セルフブランディング:企業や組織に属しない個人がブランド化していく取り組み。
・パーソナルブランディング:企業や組織内にいる一個人をブランド化する取り組み。
セルフブランディングは、企業や組織に所属しない個人が、自らのプロモーションを行い、SNSを活用しながら、メディア化を図っていきます。
一方で、パーソナルブランディングは、企業や組織に所属した個人が、組織全体のイメージ向上を目的としています。
『セルフブランディング』も『パーソナルブランディング』も、戦略的に個人をブランディングするところは似ていますが、方向性が違います。
セルフブランディングは、自分自身で自発的にブランディングを行えますが、パーソナルブランディングは、組織に属している以上、自分の都合で好き勝手にブランディングを、行うことができません。
組織の期待通りの、ブランディングを行う必要があるという点が、『セルフブランディング』と『パーソナルブランディング』の大きな違いと言えます。
セルフプロモーションとの違い
他に「セルフプロモーション」というものもありますが、意味合いがやや異なります。
その違いは以下の通りです。
セルフブランディングは、プロモーションではなく、あくまでブランディングの一環として行っていきます。
セルフプロモーションは、自らの営業活動や集客のためのPR活動など、あくまでプロモーションの一環で行うという意味合いを持ちます。
上記の通り、ブランディングとプロモーションといった、大きな違いがあります。
ブランディングとは、他とは異なる「イメージ」を作り出すことを言います。
具体的には、ブランドイメージやブランド力を高めるための活動のことを指します。
プロモーションは、「販売促進」全体を指し、ブランドの販売促進を行うためのPR活動のことです。
企業が、自社製品の販売意欲を高める活動全体のことを「プロモーション」と言います。
意味が混ざってしまいがちな「ブランディング」と「プロモーション」ですが、しっかりと理解することで、経営の戦略を立てやすくなります。
セルフブランディングを行うメリット・デメリット

次に、セルフブランディングを行うメリット・デメリットについて解説させて頂きます。
セルフブランディングには、メリットもデメリットも存在します。
メリット、デメリットの両方をしっかり理解し、取り組むことがセルフブランディング成功への近道となります。
メリット
セルフブランディングの代表的なメリットとして、
- 市場で他社と差別化できる
- 信頼度が高まる
- ファンを増やすことができる
という3つが挙げられます。
①市場で他者と差別化できる
セルフブランディングを行い、自分だけの魅力を伝えていくことで、市場で独自のポジショニングを行うことができます。
加えて、他者との差別化が実現し、価格競争に巻き込まれなくなります。
それだけでなく、強みが市場価値と合致することで、興味・関心が高まり、集客だけでなく販売もスムーズに行うことが可能になっていきます。
②信頼度が高まる
専門性と独自性が確立するため、「〇〇といえば、この人!」というような存在になることができ、信頼を高めることができます。
信頼が高まっていくということは、相手の中で良いイメージが育っているということを示しています。
具体的には、より多くの集客を行うことができるようになるということです。
加えて、影響力をつけることで発信力が高まるメリットもあります。
③ファンを増やすことができる
セルフブランディングを進めていると、自身の活動を応援してくれるファンができます。
最初は少ないかもしれませんが、長期的な顧客になってくれる可能性が高く、収入は安定していきます。
それだけでなく、ファンが口コミで自身の活動を広めてくれるため、新たな仕事が増えたり、仕事の幅も広がっていきます。
セルフブランディングは、短期間で成功させることを目標とするよりも、長期間で成功させることを目標とする方が、より多くの利益を生み出すことに繋がっていきます。
デメリット
もちろん、セルフブランディングには、デメリットも存在します。
セルフブランディングのデメリットとしては、
- 一度定着したイメージを払拭するのが難しい
- 小さなミスだったとしても信頼を失った際のダメージが大きい
- 許容量を越える仕事が来る場合が来る
の3点が挙げられます。
①一度定着したイメージを払拭するのが難しい
良くも悪くも、一度定着したイメージを払拭するのは難しいです。
特に、片寄ったブランドイメージが定着してしまうと、新たな分野にチャレンジしようとした場合に、今までのイメージが足を引っ張ってしまう可能性があります。
そのため、片寄ったブランドイメージが定着してしまわないように、様々な分野のセルフブランディングを行っていくことが必要になります。
②小さなミスだったとしても信頼を失った際のダメージが大きい
企業の場合には、従業員1人が小さなミスをしても、そのミスが組織全体のブランドイメージに、影響を及ぼすことは、ほとんどありません。
しかしながら、個人事業主やフリーランスのように、一個人がブランディングしている場合には、一つのミスが自らのブランドイメージを、下げてしまう危険性があります。
一度のミスが、これからの仕事に大きな影響を及ぼしてしまうため、注意深くブランディングを行っていかなくてはなりません。
③許容量を超える仕事が来る場合がある
個人事業主やフリーランスの場合、自分がこなせる仕事量に限界があります。
特に、ブランディングが成功した場合、許容量を超える仕事が舞い込んでしまい、案件を断って信頼を落としたり、無理に仕事を受けすぎて仕事の質が下がるといったリスクが出てきます。
そのため、多くの案件が舞い込んでも、自分のペースを崩さないように、調整していくことが必要不可欠になっていきます。
そのため、まずは自身の許容量をしっかり理解していきましょう。
セルフブランディングの構成要素

セルフブランディングは以下の要素で設計していきます。
具体的には、
- 発掘
- 抽出
- ターゲットパッケージ化
- ポジショニング
の5つのSTEPです。
STEP1.発掘:自分の実績やエピソードをもとに、ブランドの土台を作る。
セルフブランディングを行う上で、まずは自身の得意分野や強みを知る必要があります。
何を成し遂げたいのか、何を目標とするのかを、しっかり自分自身で知ることが、大切になります。
成し遂げたいこと、目標とすることを明確にするために、STEP2の抽出が必要になります。
STEP2.抽出:自分の強みやパーソナリティを、洗い出してブランドを作っていく。
パーソナルSWOT分析が、強みやパーソナリティを洗い出すのに有効的です。
パーソナルSWOT分析とは「 Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」の頭文字をとった分析方法です。
企業が、経営戦略を練るために用いるフレームワークとして、聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
このパーソナルSWOT分析を、企業ではなく個人に当てはめた「セルフSWOT分析」を行うことは、自らのブランドを考える上で、非常に有効的な手法となります。
STEP3.ターゲット:ブランドのターゲットを決める。
専門スキルを必要としている人は誰かを考えていく必要があります。
具体的には「誰のためのブランドになりたいか」ということを明確にしていく作業になります。
ターゲットを決めることによって、自身がターゲットとしたい市場を明確にしていくことができ、提供する側と提供される側ですれ違いが起こりづらくなっていきます。
STEP4.パッケージ化:ブランドをパッケージ化し価値を販売していく。
STEP1からSTEP3まで、明確にすることができたら、価値を販売していきましょう。
価値を販売するということは、決定したターゲットに向けたサービスを作り出し、提供していくということです。
例えば、提供するサービスが「名刺デザイン」であったとします。
信頼を得ることが比較的容易な、フリーランスをターゲットにしたときに「フリーランスの人が求める名刺はどのようなものか」ということを考えていきます。
フリーランスとは、企業や団体の肩書きがないため、個人名を覚えてもらう必要性があります。
そのため、名刺は普通のものではなく、インパクトが強いデザインが求められる傾向にあります。
ターゲットから明確になったコンセプトを元に「名前を覚えて貰いやすい、インパクトがある、名刺をデザインすることができる」という価値を作り出し、売り出すことができるようになります。
STEP5.ポジショニング:市場での立ち位置を明確にし、他者との違いを明確にする。
最後に、市場での立場を明確にし、他者との違いを明確にしていきましょう。
市場での立場を明確にするには「どんな人間か」「過去に行ってきたことは何か」「現在、行っていることは何か」「行っている理由は何か」「どのような信念を持っているのか」ということを、示していくことが有効的です。
これらは、言わば自己紹介となるため、簡潔かつ分かりやすいものにしていく必要があり、一度考えてしまえば、SNSや会話上で何度も使用することが可能です。
加えて、他者との違いを明確にする上で、もっとも大切なのは、コンセプトに一貫性を持たせることです。
いくら、片寄ったイメージを持たれたくないといっても、コンセプトに揺れが生じていると、信頼して貰うことはできません。
そのため、幅広いブランディングを行っていきたい場合にも、コンセプトは一貫していきましょう。
上記のように、自分自身の実績やエピソードをもとにブランドを形作り、ターゲットに向けて自分自身のもつ価値やコンテンツを、顧客に提供していきます。
加えて、市場での差別化も重要となるため、他者との、違いを明確にして、市場でしっかりポジショニングしていくことが必要不可欠となります。
セルフブランディングの注意点
セルフブランディングのデメリットの中でも解説しましたが、一度ブランドイメージが定着してしまうと、その後の方向転換が難しくなる可能性があります。
例えば、自分がビジネスを行っている業界が衰退期に入ってしまう場合があります。
そうなると、今後のビジネスが危なくなります。
このような時に備え、うまくイメージチェンジを行える「ゆとり」を用意しておく必要があります。
他社に対して、アンテナを張り巡らせておくことで、業界が衰退期に差し掛かった際に、早いタイミングでキャッチアップできるため、スピーディーに方向転換することができます。
そのためには、目の前のビジネスだけでなく、業界全体のトレンドを常に意識しておくことが重要です。
セルフブランディングの取り組み方
最後に、セルフブランディングの取り組み方について解説いたします。
セルフブランディングの取り組み方として、
- 長期的に取り組む
- 自分自身が発信できるメディアを持っておく
の2点が挙げられます。
セルフブランディングの取り組み方を、知っておくだけでも「ゆとり」を持って、セルフブランディングを行うことができるようになります。
1.長期的に取り組む
セルフブランディングは、結果が出るまで時間のかかるブランディング手法です。
現在、会社員で個人事業主やフリーランスに転身する予定の場合には、会社員であるうちに、セルフブランディングを進めておくのも良いでしょう。
会社員であるうちに実績を積んでおけば、自身の強みや独自性を明確にする準備ができているため、フリーランスになってからスムーズに、セルフブランディングの効果を発揮することができます。
2.自分自身が発信できるメディアを持っておく
個人でビジネスをする場合、発信できるメディアを持っておくのもオススメです。
SNSやブログ、YouTube、WEBサイトなど、自分の得意とするメディアで、問題ありません。
自らメディア配信を継続することで、それがあなたのポートフォリオとなり、デジタル資産になります。
加えて、メディア発信を通して「自分はこういう人間です」「こういう想いでビジネスを行っています」といった自分自身のパーソナリティを、伝えるツールになります。
そのため、一つでもメディアを持っておくだけで、よりスムーズにセルフブランディングを行うことができます。
Webを使ったブランディングについては「初めてのWebブランディング。定義からメリットまで徹底解説!」で解説しています。
有名企業の事例や、コンテンツ設計のコツなどについても触れていますのでぜひ参考にしてみてください。
まとめ

今回は、組織に縛られず、個の時代を生き抜くための、セルフブランディングについて、解説させて頂きました。
企業が、予算をかけて行うブランディングとは違い、個人事業主やフリーランスが行うセルフブランディングは、毎日の積み重ねが重要になります。
長期的に戦略を立てて、信頼や独自性を意識してコツコツと発信することが、成功への近道といえます。
ぜひ本記事を参考に、まずは楽しむ気持ちでセルフブランディングに挑んでみてはいかがでしょうか!