近年、ネット通販が主流となったことで、ECサイトの運営を積極的に行う企業が、増えてきました。
一方で、EC運営者の業務は受注処理や梱包作業、出荷、返品対応など多岐に渡るため、手が回っていないのが現状です。
そんな中、EC運営者の業務を代行してくれる「フルフィルメントサービス」というサービスがあります。
そこで今回は、バックオフィスの効率化を図ることができる「フルフィルメント」について解説していきたいと思います。
フルフィルメントとは

フルフィルメントとは、ECサイトで注文された商品が購入者に届くまでの全体の流れを、可視化したマーケティング用語です。
冒頭でお話しした、受注処理や梱包作業、出荷、返品対応などの作業を「フルフィルメント業務」と呼んだりします。
その他にも、問い合わせ対応や在庫管理、代金回収、クレーム処理など、企業のバックオフィス業務を担うポジションであると言えます。
また、最近ではこのフルフィルメント業務を代行してくれるサービスが存在します。
例えば、Amazonや楽天などが代表的です。
ここでは、Amazonのサービスを基に解説していきます。
Amazonのフルフィルメントサービス
Amazonは、「フルフィルメント by Amazon(通称:FBA)」という出品者に代わって、フルフィルメント業務を行う代行サービスを行なっています。
FBAの魅力はなんといっても24時間365日いつでも出荷できる体制や、金銭取引、クレーム対応まで行なってくれる点です。
FBAを企業が導入するメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット
1.決済方法の選択肢が増えるため新たなユーザーにリーチできる
2.海外発送にも対応しているため販路拡大が見込める
3.Amazon primeの対象としてくれるため購入確率が上がる
4.Amazon発送という安心感と信頼感が手に入る
5.小型軽量プログラムを選べば手数料が安い
デメリット
1.商品の保管がAmazonの倉庫となるため状態の確認が困難
2.業務効率化は期待できるが自社にEC サイトの運営ノウハウが蓄積されない
3.手数料がかかる
以上のように、FBA導入のメリットは、フルフィルメント業務の効率化だけではなく、Amazon内でさらに売上を上げる事が出来るという点です。
一方で、FBAと商品との相性が重要になってきますので、商品との相性や手数料、売上などを考慮し検討してみると良いでしょう。
フルフィルメントの重要性
次に、フルフィルメントの重要性について解説していきます。
どれだけ魅力的な商品を揃えていても「商品がなかなか届かない…。」「届いたけど欠品が多い。」といった、トラブルが多いと顧客の信頼は下がる一方です。
そのため、商品を安定的に届けて顧客の信頼度が高いECサイトであり続けるためには、フルフィルメント業務は欠かせない業務であると言えます。
3PLとの違い
フルフィルメントによく似たサービスに「3PL(3rd Party Logistics)」と呼ばれる物流業務形態がありますが、こちらは、物流業務を第三者に委託する事で効率化を図るものです。
よく似たサービスに思えますが、業務の代行範囲が異なります。
具体的には以下の通りです。
【3PL】物流のみを請け負うサービス
【フルフィルメントサービス】物流やお客様対応、決済処理などを行うサービス
3PLの事業で代表的な企業といえば「日本通運株式会社」や「富士物流株式会社」が挙げられます。
両者とも、長年の運送・倉庫業に携わってきた豊富な実績とノウハウで、生産から消費者までの全体の流れを考慮した物流提案を得意としています。
フルフィルメントサービスを選ぶ基準

前述で解説してきた通り、Amazonや楽天をはじめとし、三井物産や佐川グループなどフルフィルメントサービスを提供している企業は数えきれないほどあります。
しかしながら、フルフィルメントサービスを比較した情報サイトは多くはありません。
なぜなら、ECサイトで取り扱っている商品とフルフィルメントサービスを提供している企業との相性が重要だからです。
つまり、どこのフルフィルメントサービスを選ぶかは、ECサイト側が独自の基準をもって比較・検討する必要があります。
そこで、ここではフルフィルメントサービスを選ぶ基準について解説していきます。
基準1.自社がフルフィルメントサービスに求める条件を明確にする
まずは、自社が代行サービスを使う理由と求めるサービスを明確にします。
例えば、「倉庫が手狭になった」「在庫管理に要する固定費が大きくなり過ぎている」「人手不足のため顧客対応だけでも外注したい」など、自社の課題を洗い出すことで、フルフィルメントサービスに求める条件が明確になり、業者選定も行いやすくなります。
基準2.フルフィルメント業者が対応できる範囲を調べる
実は、商材によって業者側に免許が必要な場合があります。
例えば、酒類や化粧品などは「取り扱いNG」にしているフルフィルメントサービスも多く存在するため、自社の商品が取り扱い可能かどうかを確認しておく必要があります。
基準3.サポート体制を確認する
フルフィルメントサービス業者に、顧客対応まで外注する場合、対応は全てお任せする形となります。
顧客対応時の印象は、後にショップの評価などにも影響するため、カスタマーサポートの対応品質などは、事前に確認しておきましょう。
基準4.商品の保存環境の確認
精密機器やハイブランド商品など、取り扱いに注意が必要な商品をお願いする場合には、業者側の保存環境も事前に確認しておくと良いです。
フルフィルメントサービス業者に依頼をすると、業者側の倉庫で保存する形が一般的となります。
心配な場合は一度、倉庫見学が可能かどうかを確認し、事前に商品の保存環境を見学させてもらうと安心です。(※業者によって見学が難しい場合もあるため要確認)
基準5.料金体系を確認しておく
ある程度の相場はあるものの、商品のサイズや保存方法、保存期間によって料金が異なってくるため、業者によって料金体系はまちまちです。
もし相見積もりを取りたい場合は、委託したい内容をあらかじめ決めた状態で比較検討することをおすすめします。
フルフィルメントを導入するべきタイミング
ここまで、フルフィルメントの概要や代行業者の選び方などを解説してきましたが、全てのEC事業者が導入しなければいけないというわけではありません。
逆に、事業規模によっては導入しない方が、予算を抑えられるケースもあります。
具体的に、導入するべきタイミングについて紹介していきます。
1.配送作業にコストがかかり過ぎている時
在庫管理を行う倉庫の管理費や作業に携わるスタッフの人件費が、予想以上に負担になっている場合には、フルフィルメントの導入を検討してみると良いでしょう。
また、人手不足に陥っている時などもおすすめです。
2.フルフィルメントの内製化を行い業務が煩雑になっている時
EC事業を内製化し、事業規模が大きくなるほど、業務内容はより煩雑になってきます。
あまりに、規模が大きくなり組織全体で処理するのが難しいと感じ始めたら、フルフィルメントを導入するべきタイミングと言えます。
3.EC事業を始めたばかりの時
上記2点は、既存の事業にフルフィルメントを導入するスタイルですが、最初の段階で導入しておくのもおすすめです。
既存の事業に導入するより負担も少ないため、スムーズにEC事業に取り組むことができます。
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まとめ

今回は、フルフィルメントの意味や代行サービスを選ぶ基準などを、解説してきました。
フルフィルメント業務は、お客様に商品を届けて終わりではありません。
届いた商品を実際に使って喜んで貰うことが、ゴールとなります。
そのため、無理して内製化を行い、結果的に商品の破損、欠品、送り間違いなどで消費者に不信感を与えてしまうのなら、フルフィルメントサービス業者に依頼することをお勧めします。
企業として顧客の信頼を得るためにも、自社のフルフィルメント業務を今一度見直してみてはいかがでしょうか。