コストリーダーシップ戦略とは?概要と効果を併せて解説!

製品を製造・販売する企業や、自社が販路を持つ市場において、いかに競争優位性を獲得するかというのは、企業にとっての至上命題です。

この問題を解決するための戦略に「コストリーダーシップ戦略」があります。

この記事では、コストリーダーシップ戦略とはどのような意味なのか、そして、コストリーダーシップ戦略はどのように実現されるべきものかについて解説します。

コストリーダーシップという考え方

「コストリーダーシップ戦略」とは、生産・製造におけるコストを削減することで、自社の製品を低価格で市場に流通させ、競合他社に対する競争優位性を獲得するという戦略のことです。

ビジネスの世界において、特に、製品やサービスを提供する分野においては、常に競合他社が脅威になります。

具体例として、一般消費者向けの製品やサービスを提供している企業を思い浮かべれば、その状況は明らかになります。

テレビやインターネットでの広告では、「他社と比べて優れている」ことをアピールする広告は枚挙に暇がありません。

顧客に他社製品ではなく、自社製品を選んでもらうために、製品やサービスの提供者である企業は様々な競争を行います。

サービス品質の向上や短納期での納品などもその工夫のひとつです。

しかしながら、最も比較材料となりやすいのは「価格」です。

つまり、他社よりも安く製品やサービスを提供することができれば、自社製品が選択される可能性を高めることができるというわけです。

ただし、「コストリーダーシップ戦略」は、「低価格戦略」そのものを意味している訳ではありません。

この場合の「コスト」とは、製造原価や費用といった、生産コストのことをいいます。

生産コストを低く抑えることによって、結果的に製品やサービスを低価格で提供できるようにする、というのがコストリーダーシップ戦略です。

コストリーダーシップ戦略における3つの基本戦略

コストリーダーシップ戦略は、ハーバード大学教授のマイケル・ポーター氏によって提唱された基本戦略の一つです。

マイケル・ポーター氏は、コストリーダーシップ戦略の他に「差別化戦略」「集中戦略」を提唱しており、これらがビジネスにおいて競合他社に勝つために重要になる基本的な戦略だと述べています。

ここでは、

  • 差別化戦略
  • 集中戦略

について解説していきます。

差別化戦略

差別化戦略とは、競合他社の商品と差別化を図るために自社商品の独自性を強調する戦略のことを言います。

他社製品との差別化を図る上で「商品の機能性」「品質」「技術力」「ブランドイメージ」「顧客対応」など様々な観点に注目する必要性があります。

差別化戦略を行う上で最も重要になるのが、顧客一人一人に自社製品の価値について正しく認識してもらうということです。

自社の商品と他社の商品の差別化を行い、顧客に対して自社製品の価値をしっかり伝えることによって、多くの顧客に注目してもらいやすくなり売上アップにも繋がっていきます。

集中戦略

集中戦略とは、自社商品を販売していくターゲットを特定の範囲に絞り、自社の経営資源を投資していく戦略を指します。

集中戦略を行うことによって、経営資源をどこに投入するかを特定のマーケットに絞ることによって、浮いた経営資源を商品の生産にあてることができ、品質がより高い商品を提供することが可能となります。

仮に自社事業の規模が競合他社に劣っていたとしても、集中戦略を行うことで自社資源を特定の市場に集中させることができ、特定の市場内であれば大企業に勝利を納めることもできます。

コストを低くすることと市場におけるリーダーシップとの関係

先に述べたとおり、世間で提供されている製品やサービスはつねに競争にさらされています。

同じ分野での製品や、サービスを提供している競合他社との競争に勝ち抜き、自社製品を選んでもらうための戦略を立てます。

他社と自社とを製品・サービスで比較した場合に、明確に異なる点があり、その相違点が顧客にとって有利であることが、製品やサービスが選択される基準となります。

このとき、顧客に訴求するためのポイントのひとつに「価格」が挙げられます。

低価格な製品はそれだけで競争優位となり、市場における競争においてリーダーシップを得られる可能性が高まります。

しかしながら、この考え方には落とし穴があり、コストリーダーシップ戦略は単純に「安売りをせよ」という戦略ではありません。

製造・生産・流通におけるコストを下げ、労働力や工程を効率化することで、生産コストを下げ、結果的に市場において低価格での提供が可能となるというのが、コストリーダーシップ戦略の要です。

わかりやすい施策のひとつがコストカットや人員配置ですが、生産コストの低減は、コストカットや人員配置、ましてやリストラなどによる人員整理を目指しません。

コストを「安くすればよい」わけではない

製品の生産には費用がかかり、それを支払わなければ製品を提供することはできません。

また、労働力についても同様で、給与を支払って労働者を雇わなければ、生産を行うことは困難です。

コストリーダーシップ戦略では、「同じコストをかけても、より生産性を高める」ことを重要視します。

例として、ある企業では同様の機能をもつ2種類の製品を生産していますが、それぞれ別の部品や資材、別の生産ラインを使って製品を製造していると仮定します。

それぞれのラインに対して別途の原材料が必要となるだけでなく、場合によっては別途の流通ラインまで整備しなければ、効率的とはいえません。

この2種類の製品が、同じ部品を共有していれば、生産コストは一気に下げることができます。

他にも、コスト面で見直すことができるものとして、生産技術の共有があります。

これは、厳密には異なる製品や、完成形としての製品は異なるものの、その生産工程において共通の生産技術が求められるようなケースに当てはまります。

例えば、書籍を扱う出版社が雑誌を扱うようになったり、車のエンジンを製造している会社が船舶のエンジンを扱うようになるなどが挙げられます。

このような実例や事例から考えると、コストリーダーシップ戦略とは、本質的に「コストカット」や「値下げ」ではなく、「業務効率化」に近い概念であるといえます。

この違いを理解することで、コストリーダーシップ戦略を正しく自社の生産・流通の業務フローの中に取り入れることができるのです。

コストリーダーシップ戦略の副次的な効果

コストリーダーシップ戦略を取り入れることで、生産技術・流通技術が共有されるようになった時、まず得られる効果は、本来の目的である「生産コストの抑制」です。

製造原価・生産原価が安くなり、最終的な製品の価格も下げることができます。

結果的に、市場内で競合他社との間に競争優位性が生まれ、高いシェアを目指すことが、可能になります。

さらなる効果として、自社で働く労働者・労働力を効率的・集中的に運用できることが挙げられます。

コストリーダーシップ戦略は、生産工程・生産力を効率的に運用することを目的としていることから、特定の製品や特定の市場においての優位性を確保するために、必要なコストを集中的に投下することになります。

そのため、非効率的であった分野への人員配置を見直し、本来投下するべき製品への生産・流通に集中させることができるなどの効果が期待できます。

分かりやすい例としてマクドナルドの戦略が挙げられます。

マクドナルドのコストリーダーシップ戦略は、一時的に業績悪化を招いたことから賛否がありますが、徹底して食材の調達から販売までの生産・流通工程を省力化することで、製造原価を大きく削減し、結果的に低価格での販売を可能としました。

その結果、ファーストフードといえばマクドナルドというイメージを、一般消費者に認知させるほどに、市場での優位性を確保することができたのです。

製造原価を低く保ち、結果的に低価格で提供できる製品を集中的に市場に大量放出するという、コストリーダーシップ戦略のお手本ともいえる実例です。

コストリーダーシップ戦略の成功事例

「マクドナルド」の成功事例について解説しましたが、他にも成功を収めた企業があるのでご紹介します。

具体的には、

  • ユニクロ
  • ニトリ
  • すき家
  • サイゼリア
  • Amazon

の5社です。

ユニクロ

事例一つ目が、1974年創業衣料品の製造から販売までを手掛ける「ユニクロ」です。

ユニクロの特徴として挙げられるのが、高品質の商品を競合他社に比べて安い価格に販売している点です。

ユニクロが競合他社に比べて高いコストパフォーマンスを実現している理由として、「商品の開発」「製造」「販売」までの流れを自社内で行う仕組みを取っているということが挙げられます。

卸売り業者を挟まずにいることで、仲介手数料がかからず衣料品を安く販売することが可能になりました。

ニトリ

株式会社ニトリは、1967年に創業し家具およびインテリア用品の製造から販売を行う企業です。

ニトリもユニクロと同様に、商品の製造から流通・販売までを自社で行うことでコスト削減を徹底しています。

ニトリでは、高品質且つ安く家具を顧客に提供することができるように、長期間に渡ってコストリーダーシップ戦略に力をいれて取り組んでいます。

すき家

すき家では、マクドナルドとは異なる形でコストリーダーシップ戦略を行い、売上の向上に成功した企業です。

すき家は、食材を一度に大量に仕入れ原価を抑えているだけでなく、各店舗の少人数オペレーション化を導入することによって人件費の削減にも取り組んでいます。

原材料にかかるコストであったり人件費を削減することに注力することで、生産コストを大幅に下げることで価格を安くすることができ、安く商品を顧客に提供することが可能になりました。

サイゼリア

株式会社サイゼリアは、1973年創業のイタリアンファミリーレストランを展開している企業です。

サイゼリアは、日本に沢山あるファミリーレストランの中でも、手頃な値段でイタリア料理を提供しており幅広い年齢層から人気を集めています。

サイゼリアは、コストリーダーシップ戦略の一貫として原材料の仕入値の見直しや流通システムを徹底的に管理することで生産にかかるコストの最適化を図っていることが特徴です。

Amazon

Amazonは、1994年にアメリカで創業されたインターネットを活用した小売業者のことをいいます。

Amazonでは、商品管理をする物流センターを都市部に建設せずに、土地代が比較的安い郊外に物流センサーを建設することによってコストを削減することに成功しました。

加えて、Amazonでは競合他社に勝つことを目的として、創業してまもなくは赤字覚悟で低コストの路線にこだわり続けたことも特徴です。

赤字覚悟の低コスト路線にこだわり続けたことで、ユーザーからの信頼を得ることに成功し、ECサイトマーケット市場を牽引する大企業に成長しました。

コストリーダーシップ戦略を導入するメリット

コストリーダーシップ戦略を導入することによって、企業は様々なメリットを得ることができます。

具体的には、

  • 顧客に購入してもらえる可能性が高くなる
  • 不況時のリスクを抑えることができる

の2つが挙げられます。

顧客に購入してもらえる可能性が高くなる

顧客は、商品の価格だけでなく品質など様々な事柄を総合的に評価して商品の購入するかどうか検討します。

そのため、どれ程品質が良かったとしても価格が高ければ一部の方しか手に取らないという現象が起きてしまいます。

商品の価格は、顧客側が商品を選ぶときに一番重要になる判断材料になるため、コストリーダーシップ戦略の低価格の商品販売はオススメです。

不況時のリスクを抑えることができる

コストリーダーシップ戦略を導入することで、不況時の商品の売れ残りを原因としたリスクを抑えることが可能になります。

不況時が続けば多くの人は節約を行い、可能な限り安い商品を求める傾向にあります。

競合他社よりも低い価格で商品を販売することによって、不況時の商品を買ってもらえないというリスクに悩まされる可能性が低くなります。

それだけでなく、仮に売れ残りが出てしまった場合にも、商品1個辺りの値段を下げておくことでリスクを抑えることができます。

つまり、コストリーダーシップ戦略を導入することによって、景気の変動による影響を最小限に抑えることができるだけでなく、顧客からの「この企業の製品はいつでも安いから安心」というように、顧客からの信頼に繋げることも可能です。

まとめ

自社の製品を市場内で競争させるうえで、他社との差別化を目指し、その方法として品質の向上などを目指すというのは、どの企業でも一度は検討材料に挙がることです。

しかしながら、多くの企業が市場での圧倒的なシェアをつかむのはそう簡単なことではないという結論にたどり着き、競合他社との差別化を図り続けているのが、実情であるともいえます。

コストリーダーシップ戦略は、自社の製品、あるいは自社という存在そのものを、市場内で確固たる地位に据えるために採られる戦略です。

単に、在庫放出のための安売り戦略や、特売日を設けるなどの一時的な安売りとは、根本的に異なります。

業務の効率化、生産・製造における省力化を果たしてこそ、生産原価・製造原価の低減を実現することができます。

このような企業努力の結晶として、安い製品を市場に流通させることができるのです。

コストリーダーシップ戦略は、一般的に考えられる人員整理・外注化などで、実現されるコストカット戦略ではなく、効率化・省力化によるコスト削減という考え方であることをしっかりと理解することが、コストリーダーシップ戦略実現のための第一歩となるでしょう。

競合他社に差を付けることを可能にするコストリーダーシップ戦略を導入してみてはいかがでしょうか。

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