お金を払って、企業などの事業主から商品やサービスを購入する「一般消費者」の消費行動は、基本的に自分自身のためや、自分の家族などごく親しい人のために行われます。
それ自体は悪いことではありませんし、消費が本人のために行われるのはある意味当然ともいえることです。
しかしながら、消費者が商品を手に取るまでの間には、様々な企業や生産者が手を加えており、また、その生産・製造工程においては、環境や社会にとって負担となる行動も取らざるを得ないケースがあります。
これまでの消費者による消費行動については、ことさらそのようなことを考える必要はなかったのですが、現代においては、この世界に生きる多くの人が、これからも生存と発展を続けていくための「持続可能な社会」を作っていくことが、求められています。
こうした考え方のもと「SDGs」や「サステナビリティ」という用語がメディアなどでも、盛んにPRされてきました。
それとごく近い考え方で、消費者による消費行動についても、従来にはなかったような「持続可能性」を考える必要があるという考え方から「エシカル消費」という言葉が、近年では注目を集めています。
この「エシカル消費」とはどのような消費行動なのかについて、この記事で解説します。
「エシカル消費」とは

「エシカル消費」とは一言で言い表すならば、「地域活性化・雇用までをも含む、人・社会・環境に配慮した消費行動」のことを指します。
「エシカル消費」は「倫理的消費」と言い換えられて使われることもあります。
通常、一般消費者が店舗などで商品やサービスを購入する際には、自分が必要と考えている商品やサービスを受けるために、消費行動をします。
社会的意義のある支出というのは、もちろん消費者にとって「あり得ない出費」ではありませんが、それはどちらかというと消費行動というよりは「募金」や「支援」といった、消費を伴わない行動に向けられることが、多いといえるでしょう。
こうした「公益目的での出費」ではなく、「自らの消費行動について、社会的・環境的配慮をした出費」をするというのが、エシカル消費の考え方です。
日々の消費行動、例えば買い物などを通して、現在人類が直面している様々な問題に対して、消費者一人ひとりの立場からアプローチしていくというステップが、エシカル消費なのです。
このエシカル消費については、2015年9月に国連で採択された、「持続可能な開発目標(SDGs)」の、17個あるゴールのうちの、ゴール12に関連する取り組みとされています。
具体的にエシカル消費とはどのような消費行動か
では、具体的にはどのような消費行動が「エシカル消費」となるのでしょうか。
例えば、食料品などについて言えば、日本は食料自給率が低く、食材はほとんどが海外からの輸入に頼っています。
そして、その中には発展途上国で安い賃金で大量生産を強いられた環境で生産された食料品も含まれています。
こうした発展途上国での低賃金での大量生産行動は、紛れもなく発展途上国の人々の貧困につながる原因のひとつです。
そうしたものを一般消費者が購入することは、それらの低賃金労働者の生活を黙認することに繋がり、このような消費行動を続けることは、発展途上国が抱える問題を放置する「持続不可能」な消費行動であるとも表現できます。
こうしたときに、人や社会、環境に配慮された、いわゆる「フェアトレード」の商品を購入することなどは、エシカル消費の代表的な事例であるといえるでしょう。
「フェアトレード」と「エシカル消費」は異なる概念ではなく、エシカル消費は、フェアトレード製品を購入するという消費行動を「エシカルな消費である」と定義づけることになるため、この両者は矛盾しないことになります。
このほか、商品などについて言えば、例えば障がい者施設などで作られた製品を積極的に購入することや、いわゆる「地産地消」の推進、つまり、地元で作られた製品を購入することで、地域経済の発展や活性化に繋がるエシカル消費であるといえるのです。
このように「自分自身の購入目的が達成できればいい」「自分自身が安い価格で調達できればいい」という考え方ではなく、「その商品を購入する消費活動はどのような意味を持つか」というバックグラウンドにまで配慮しましょう。
そのうえで、消費行動を行うというのが、エシカル消費の基本的な考え方です。
その他のエシカル消費

フェアトレードや地産地消以外にも、エシカルな消費行動はあります。
例えば、ペットボトルや缶などの廃棄物を削減するために、マイボトルを活用したり、ゴミの排出をへらすためにマイバッグを使用するなどもエシカル消費に該当します。
加えて、これまで電球を購入していた人が、環境負荷の少ない省エネLEDに交換するために購入するといった消費行動もまた、エシカルな消費であると定義づけられます。
「購入」「利用」といった行動以外にも、消費者が日常生活を送るうえで、自分自身が社会や環境に与える影響を把握・考慮して行動をするということこそがエシカル消費の本質であるのです。
なお、冒頭にて「寄付」について触れましたが、たとえば、「売上金の一部を寄付する」という契約での購入などは、その「寄付」に魅力を感じたり共感をして購入するという消費行動について言えば、エシカル消費のひとつであると考えてよいでしょう。
企業が把握するべき「エシカル消費需要」
一般的に、フェアトレード商品や、いわゆる「環境に配慮した商品」というカテゴリの商品は、消費者から見ると「敷居が高い」という印象があります。
フェアトレード以外にも、オーガニック食材などについても同様の図式が成り立つ場面があります。
かつては日本のみならず、どの国の消費者でも、やはり消費者にとっては安い商品が正義であり、いわゆる「エシカル消費」というのは、「生活に余裕のある富裕層がやるもの」というような認識が、強くありました。
そして企業側にとってもそれは同様であり、「消費者は結局安いものを選ぶ」という認識が、一部企業にはあったのです。
しかしながら、今日では、環境問題や持続可能性について子どもの頃から教えられ、自ら考える世代が多くなってきたことやインターネットやSNSを通じて海外でのエシカル消費に関する状況が非常に分かりやすくなりました。
より、分かりやすく伝えられるようになったことで、エシカル消費への消費者の心理的ハードルは非常に低くなったのです。
「価格が相対的に高かったとしても、自分の納得した商品を購入する」という消費者も増えてきており、この傾向については、商品やサービスを提供する企業側が見落としてはいけないものであることは間違いありません。
「エシカルであっても、高いものであれば消費者は買わない」という決めつけは、現代の消費者には必ずしも当てはまらないのです。
まとめ

現代の世界には、環境問題や資源、エネルギー問題などのような、様々な問題があります。
これまで、海外の情報が手軽に手に入らなかった時代や、その時代を生きた世代にとっては、「環境に配慮した商品なんて買っていられない」という意見もあったでしょう。
それは、当時の社会情勢的にもやむを得ないものであったかもしれません。
しかしながら現代では、情報はリアルタイムに地球全土に行き渡り、手元のスマートフォンで、あらゆる情報を入手できる消費者がほとんどです。
企業や事業者も、こうした「消費者の変化」にいち早く気づき、企業として、商品やサービスの提供者として、エシカル消費を志す消費者に対して今後どのように事業を展開していくかということを真剣に考えなければならない時代になったといえるでしょう。